供述の整合性
供述内容が真実であることを確認するためには,最終的にはその供述が事実と一致していることが必要になります。しかしそもそも事実自体が客観的資料のみで確定しがたい事項について,供述という証拠が意味を持つわけですから,供述によって証明されるべき事実と供述の対応関係は,原理上直接確認することができず,常に間接的な関係の評価に留まります。
ところで供述は物語として成り立つものであり,単純な「事実の反映」ではあり得ません(「
物語としての供述」)。そして事実はそのような供述者の主観的構成作用によって作られた「物語」を通して語られることになります。けれども供述が不可避的にそのような主観性を持つからと言って,それが恣意的なものであってはならないことは当然のことです。
供述分析ではその「物語」の質が判断され,そこで「事実」として語られた内容が単なる主観的で恣意的な「創作物語」ではなく,事実を参照点として形成されていることを確認する必要があります。理念的に言えば,次の図の左側のように事実が供述に支配される関係ではなく,逆に右側のように供述が事実に従属する形になっていなければなりません。
供述がそのような恣意性をどれほど排除したものになっているかを評価することは,供述分析では重要な検討事項になりますが,その点で重要なチェックポイントの一つとして,供述の整合性の有無があります。より具体的に言うと,供述の整合性を確かめるためには,次の三つの関係について考えてみる必要があります。
@ 物証など,客観的に確定できる証拠と供述の対応関係
A 他の供述者の供述との対応関係
B 同一供述者の供述間の対応関係
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これらの対応関係を検討し,供述の整合性という観点からその質を判定する基準は基本的にはシンプルなもので,それらの関係内部の「矛盾」の有無を検討することです。
日常生活でもしばしばそうですが,裁判も「事実は一つ」という認識を基本に据えて成り立っており,供述はそのような「唯一の事実」によって説明可能なものでなければなりません。それゆえ,事実関係について供述が整合的であるということは,矛盾がないということを要件にします。
ところが現実の供述,とりわけ事実関係に争いのある事件では,いたるところにそのような矛盾が見出されることが普通です。したがって供述内容の信用性が肯定されるためには,これらの対応関係のすべてについて,矛盾がないか,あるいは矛盾があった場合にはそれを解消しする合理的な説明が行われなければなりません。
次項に述べる「
供述姿勢の質の評価」は,矛盾の原因が供述者にあると考えられる場合,その要因を具体的な供述内容から分析し,供述評価の素材を提供する手段になります。